団体設立から8年目/これまでを振り返って
ー 今日はHPをリニューアルするにあたり、いろいろと宮治さんにお話を聞けたらと思っています。まず最初に、農家のこせがれネットワークの設立から、少しお話を伺わせて下さい。
宮治: 僕たちのNPO法人農家のこせがれネットワークも今年で8年目。スタートしてから、本当に様々な活動を実施してきました。農家のこせがれの為の団体ということで、日本全国で実際のこせがれ達と一緒に活動することはもちろん、その親御さん、自治体の皆さん、企業の皆さん、本当に多くに方達と触れ合いながら、多くの皆さんに助けていただきながら、活動を続けてくることが出来ました。
本当に感謝しています。
これまでの8年間を振り返って、今僕らがやるべきことが随分整理されて来た気がしています。
去年から“農家のファミリービジネス研究会”という研究会をスタートさせているのですが、キーワードとして【事業承継】を掲げています。こせがれ達をサポートしていく上で、やはり親から子、この【事業承継】を時代を捉えながら、うまく繋ぐことで、多くのこせがれ達のサポートが出来るのではと。少しずつ手応えを感じつつ、今あらたに多くの取り組みをスタートさせています。
– これまでに全国のこせがれメンバー達と一緒にさまざまな活動を実施してきました。
今の時代に沿った“こせがれ”サポートとは
ー なるほど。 実際に8年間の活動の中で、こせがれを取り巻く環境も変わりましたよね。以前より食の安心安全、地産地消など、食や農に関する注目は上がって来ていると思います。その辺りについてはどうでしょうか?
宮治: 僕たちが活動をはじめた頃は、農家のこせがれをサポートする機会として、東京などの都市部で、各地域でこせがれ達が生産する品々を販売する“小売りの場”を作ることが求められていました。
農業者を中心とした小売りの場があることで、あらたな出会いが生まれ、お互いの活動を認識し合い、そこから情報交換が出来るんです。それがすごく大切でした。
そして、この5年ほどでFacebookなどのSNSが発達することによって、情報交換であればSNSを通じて手軽にどんどん行なうことが出来るようになった。小売りの場がなくても、想いのあるこせがれ同士が繋がり、想いを通じ合うことが出来る時代になったんですね。
そういった環境の中で、僕らの団体の役割も少しずつ変わってきました。
より具体的に、こせがれが事業を実践していく上での経営力の向上、またそれにまつわる経営に必要なノウハウの提供が求められるようになってきたんです。
– インタビューは横浜関内にあるシェアオフィス mass×mass 関内フューチャーセンターにて
農家のこせがれ達の中で、実家を離れ都心部で働いている若者たちは数多く居ます。その彼らに必要なのは、現役の農業者との接点。これは変わらずに重要なことだと思ってます。その現役であたらしいチャレンジを実践している農業者の声を聞くことで、非常に刺激をもらえますから。
都心部で“場”づくりを行なっている僕たちにとって、そういった“場”を提供していくことは大切な役割の1つです。でも、ただ集まる場だったら、僕たちが主催する必要がない。
もう1歩踏み込んで、こせがれにどんな価値を提供していけるのか?時代の変化とともに、組織としてのミッションも変わってきていると思います。
事業承継/その為のコミュニティを創りたい
ー そうだったんですね。
こせがれに必要な支援としてテーマとして掲げられている「事業承継」。そのテーマが大切なんじゃないか、そう思った経緯を教えて下さい。
宮治: 先日JAが発行している雑誌『地上』2016年10月号の特集で、監修をお手伝いさせていただきました。テーマは「親元就農でいこう!」です。
今、国や自治体も新規農業参入者を増やすための取り組みをしていますが、やはりこせがれが事業主たる親父について就農することが一番、手堅く、中長期で見てもその地域の農業をさらに活性化することに繋がります。きちんと【事業承継】という視点を持ちながら、親元で経営のこと、技術のことを学ぶことで、より一人前の農業経営者として成長していくことが出来る。
僕はそう思っていて、その時にどの部分に注意しながら、きちんと想いと技術を受け継ぎながら、これからくる時代に備えていくのか。この辺りのことを今は「農家のファミリービジネス研究会」を通じて、対話を通して学べる場・コミュニティづくりを実践しています。
実際に全国で多くのこせがれ達とも沢山の交流を通じて感じたのは、やはり実家に就職する=”受け身”な人が多いなと。親が実践している農業をそのままやらされている、その部分を特に意識せずに、やらされてしまっている人が実は多いなと。
【事業承継】とは、次の時代のための農業、こせがれ達が取組むべき農業を視野に入れながら、今ある農業を学び、小さなチャレンジを実践し続けること。こせがれの側から、事業承継を意識して、働きかけていかなければいけないんですね。親側から「お前も一人前になったから、事業やってみるか?」とはならないんですよね、普通は。
今の農業は現状維持では衰退する。それは確実なこと。人口減少の世の中で、これまでと同じことをしていたら、駄目なんです。簡単に【事業承継】といっても、1、2年では到底出来ません。いろいろ考えても10年は掛ることなんです。親のやり方をきちんと学ぶ5年、そしてその経験を活かしながら、あたらしいチャレンジを親にも判断を仰ぎながら実践してみる5年。今の農家の平均年齢が67歳と言われています。
とすると、【事業承継】はすぐにでもはじめておかないといけないはず。
その意味でも、農業にまつわる経営相談を、実践者同士、こせがれ同士が集うことで忌憚のない情報交換が出来る場所。そんな場を創りたいと思って「農家のファミリービジネス研究会」をスタートさせたんです。やはり農家同士、特にお隣や近所の農家には自分たちの経営状況は知られたくないですから、相談し合ったりは出来ないですよね。だからこそ、僕らが都心部で開催している研究会は、どんどん意見を言い合える環境を用意したい。そうすることで、まだ帰農していないこせがれにも、良い刺激を与えることが出来たらと。そんな風に思っています。
これからについて/さまざまな接点を生み出したい
ー そうですか、非常にこれからが楽しみですね。
最後にHPリニューアルを通じて、取組みたいこと、届けたい想いなどあれば教えて下さい。
宮治: 今回、サイトをあたらしくするにあたり、“こせがれ”はもちろん、その他のさまざまな方々とのつながりを生み出す場にしたいと思っています。
これまでも継続して実施してきた「【農家のこせがれ交流会】はもちろん、「【農家のファミリービジネス研究会】や、「【農業セミナー】「【REFARM会議】など、この8年間で得た経験を元に、いろいろなテーマや目的に合わせたプロジェクトを実施しています。
そういったプロジェクトをもっと可視化していきたいですし、それぞれの場にもっと数多くの皆さんに訪れてもらえたらと。
また今回のサイトリニューアルを通じて、全国のこせがれ団体の仲間たちも紹介していきます。各地方で活躍しているこせがれ達を知ってもらって、もし近くでくすぶっているこせがれが居たら、一度イベント等に足を運んでもらって、相談できる仲間を見つけて欲しい。そんなきっかけをこのサイトが生み出せたら、本当に嬉しいですね。
僕たちは東京で定期的にイベントを行なってますし、もし東京に足を運べない方が居たら、仲間たちのイベントに足を運んで欲しいんです。やっぱり直接会って、対話を通じての関係性が一番重要ですから。
また最近は各地域の自治体の方々からもいろいろなご相談をいただくようになりました。今こせがれや農業従事者がどんな情報を求めているのか、これまでの活動で経験してきたことを、どんどん地域や社会に還元しながら、農業を軸に日本を元気にしていきたい。
企業の人も、自治体の人も、いろんな人達が1つになって“農”業界を真剣に向き合い、実践していくこと、それが僕たちの組織がお手伝い出来ることの1つだと思ってます。これからも、当事者側からの発信をベースに、未来の“農”を沢山の皆さんと考え実践していきたいと思ってます。
皆さん、ぜひ応援宜しくお願い致します!
ー 宮治さん、ありがとうございました!ぜひHPを思う存分、ご活用お願い致しますよ笑 これからの活動、益々期待しております!
text: masanobu morikawa
photo: hiroyuki horigome